日仏友好160周年に寄せて。資生堂デザイナーがつくる『ふろしき展』

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「資生堂デザイン」に息づくフランスのエッセンス

--日仏友好160周年を記念し、フランスで開催されている文化・芸術の祭典『ジャポニスム2018』。その特別企画である、東京都とパリ市との文化交流事業『パリ東京文化タンデム2018 FUROSHIKI PARIS』で、クリエイティブ本部のデザイナーが制作したふろしきが使用されたそうですね。

髙嶺:資生堂は、ショーや展示への協賛などさまざまなかたちで『ジャポニスム2018』に参画しています。『パリ東京文化タンデム2018 FUROSHIKI PARIS』は、「世界初のエコバッグ」とされるふろしきを日本文化のシンボルとして紹介する企画です。

その一環で行われる、ふろしきの魅力や使い方を伝えるワークショップに、資生堂のデザインの力を役立てられればと、クリエイティブ本部にも声がかかったんです。

菊地:コンペティション形式で優秀な作品を選んで盛り上げようと、若手からベテランまで、広く20名のデザイナーに参加してもらいました。投票の結果選ばれた上位三名のふろしきを、ワークショップで使用していただきました。

--デザインはどのようにして進めたのでしょうか?

髙嶺:資生堂のシンボルである「花椿マーク」を要素に入れることだけを条件に、あとは自由にデザインを進めてもらいました。

菊地:もともと資生堂とフランスとの関係は古く、創業者の福原有信は1900年に『パリ万博』を体験、その息子で初代社長の信三は1913年の約1年間をパリで過ごし、多くの芸術家と交流を深めました。そして資生堂がつくる化粧品のパッケージや広告に、フランスで学んだアールヌーボーやアールデコの要素を取り入れたのです。

日本の風土で育まれた美意識のなかにフランスの影響を組み込んだ「資生堂スタイル」は、いまのデザイナーたちにも脈々と受け継がれています。

今回は『ジャポニスム2018』に寄せて「日本とフランスのハイブリッド」を表現することがテーマでしたが、それぞれが自分のなかに持つ「資生堂らしさ」を自由に表現してほしいと思っていました。

髙嶺:蓋を開けてみると、ひとつとして似たものはなく、かつそれぞれに資生堂デザインの美意識を感じさせる作品が集まりました。

上段左より:
浅野 綾子、池田 昂己、井上 千聖、沖田 颯亜
小田 華子、久我 遼祐、小林 一毅、小林 麻紀
小林 豊、近藤 香織、佐野 りりこ、髙礒 恵子
髙田 大資、戸瀬 麻梨乃、成田 久、長谷 麻子
花原 正基、松石 翠、三浦 遊、山田 みどり

包むことで、違う表情が現れる。ふろしきデザインの奥深さ

--コンペティションにあたっては『ふろしきデザイン展』を社内で開催し、投票を募ったそうですね。

高嶺:はい。壁一面に作品を並べ、グラフィックとして見せたほか、ものを包んだときのかたちも併せてデザイナー自身に提案してもらい、展示しました。包むものも包み方も自由としたのですが、重箱や瓶などのほか、果物を包んできた人もいて、それぞれの個性が光りましたね。

投票は主に資生堂銀座ビルで働く社員を中心に行われ、全体で約300票余りが集まりました。

--結果上位に選出された三つは、それぞれどのような作品ですか。

菊地:「かさね」という近藤香織の作品は、「柄と柄」や「色と色」を重ね、着こなしや動きによって見え方が変わる日本の「着物」の面白さに着想を得ています。「何度も結んで検証した結果、四隅の色を変えると、結び方によってダイナミックな変化が生まれることを発見しました」と本人が言うとおり、包まれるものや包み方によって違った魅力が表れていた点が評価されたのだと思います。

髙嶺:松石翠の「椿の水引」は、資生堂のシンボルでもある「椿」をかたどった水引がモチーフです。ふろしきとしてオーソドックスな佇まいがあり、男女問わず幅広く人気がありました。展示中は包んだ花瓶に、生の紫陽花を活けていたのが印象的でした。

また、長谷麻子の「日仏和合模様」は、日本由来、フランス由来の模様や装飾が同居し、日仏の要素が絶妙なバランスで融合されています。『ジャポニスム2018』というテーマとの親和性を意識した社員に多く選ばれたのではないでしょうか。

菊地:単なるコラージュではなく、自ら手描きすることできちんと咀嚼し、自分の表現として昇華していると思います。

面白かったのは、近藤のコメントにもあるように、ものを包んだ際に、ただ広げてグラフィックとして見たときとはまったく違った表情が見えてきたことです。

今回参加したデザイナーには、スペースデザイナー、パッケージデザイナー、そしてグラフィックやムービーなどを扱うコミュニケーションデザイナーの3タイプがいたのですが、不思議なことにコンペで選ばれた三人は全員パッケージデザイナーでした。本業で立体をデザインしている彼らは、ものを包んだときのかたちや色を逆算して平面に落とし込むというプロセスを、丹念に行ったのではないかなと想像できます。

近藤 香織「かさね」
近藤 香織「かさね」
松石 翠「椿の水引」
松石 翠「椿の水引」
長谷 麻子「日仏和合模様」
長谷 麻子「日仏和合模様」

全20作品がパリへ。FUROSHIKIワークショップで得た手応え

--『ふろしきデザイン展』は、空間デザインにもこだわられたそうですね。

髙嶺:はい。スペースデザイナーの岸野桃子が、より作品を魅力的に見せられる展示空間を設計しました。ふろしきのデザイン制作と並行して構想は進めていたのですが、集まったデザインを目の前にしたあと、出品者からの意見も取り入れて検証し、最後まで工夫を重ねました。

包んだものを展示する台は、それぞれ少しずつ高さを変え、正面に立ったときにすべての作品が見渡せるような階段状に設計しました。また、実際に手にとって見ることができるよう、ふろしきを吊るして展示するコーナーもつくられました。3つの多角的な見え方を提案する、美しく楽しい空間がつくれたと思います。

--パリでのワークショップについては、反響はいかがでしたか?

髙嶺:2018年11月の毎週末、計8回行われましたが、小さいお子さんから老若男女問わず幅広くご参加いただき、毎回満席でとても好評でした。私自身も視察に行かせていただいたのですが、包み方、結び方次第で一枚のふろしきが様変わりすることに驚嘆しながら、日本の文化に親しみ学ぼうとする皆さんの様子に直に触れ、とても嬉しく思いました。参加の記念に、使ったふろしきをそのままプレゼントしたことも大変喜ばれました。

また、当初より上位三作品をワークショップで使っていただくことは決まっていましたが、『ふろしきデザイン展』をご覧くださった東京都の方が「ぜひ同様の展示をパリでも」とご提案くださり、ありがたいことに20作品すべてを展示する機会が得られました。

--コンペに参加したデザイナーたちからは、どのような反応がありましたか。

菊地:普段彼らは特定のブランドを担当し、届けるべき対象や目的に合ったデザインをしています。そのなかで「誰のためにデザインするか」から自由に発想できる今回のふろしきデザインには、なんでも自分で決められるがゆえの難しさ、楽しさがあったのではないかと思います。

髙嶺:参加したデザイナーたちにもそれぞれ一票を投じてもらったので、「ほかの人のデザインを見て、こういう発想もあったかと勉強になった」という声もありました。

何より自分のデザインを異国の地、パリでたくさんの方々に見ていただけた経験は、特に新人のデザイナーたちにとって大きな励みやモチベーションにつながったのではないかと思います。

会場デザイン:岸野 桃子
実際に手にとって見られるコーナーも
パリで行われたワークショップの様子(パリ日本文化会館)

 

ポスターデザイン:小林 一毅
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