
--「うさぎたん」はLINEスタンプでも大人気のキャラクターですよね。どのようにしてこのキャラクターが生まれたのでしょうか?
小助川:もともとは、資生堂のWebサービス「ワタシプラス」の中で展開したアニメーションがきっかけで生まれたキャラクターです。2012年に、アニメーションを使って「ワタシプラス」の様々なコンテンツを紹介する企画、「アニメーション博覧会」を行うことになり、それぞれの個性を持った10人程のアニメーターの方にアニメーションを作っていただきました。そこで、HORSTON(ホーストン)さんというクリエイターの作品に出てきたのが、この「うさぎたん」だったんです。
--どんなアニメーションだったのでしょうか?
小助川:ワタシプラスの「ポイントプログラム」を紹介するアニメーションで、ノーメークのうさぎが、メーキャップをして、かわいくなって街に繰り出すというストーリーでした。当時はまだ、名前さえついていないような立ち位置のキャラクターだったんです。クリエイターの自由な創作を期待する企画だったため、特に具体的なオーダーをしたわけではなかったのですが、社内から「かわいい!」という声が上がって、いつの間にか「うさぎたん」だけが一人歩きするようになりました。それから、何か「ワタシプラス」を宣伝するグッズを作ろうというときに、「うさぎたん」のストラップを製作したんですが、それがブームのきっかけになり、LINEスタンプを始めるときにも「うさぎたん」の名前が真っ先に挙がったんです。
--その後、「うさぎたん」を起用したLINEスタンプの施策がはじまるわけですね。これまでの資生堂のプロモーションの中でも、キャラクターが中心になる事例は珍しいのではないでしょうか?
小助川:珍しいかもしれないですね。「資生堂のキャラクター」ではなく、あくまで「ワタシプラスのキャラクター」として登場したのがちょうどいいバランスだったように思います。LINEスタンプは2012年から始まったのですが、LINEのユーザー数が若い世代を中心に爆発的に延び始めた時期で、「うさぎたん」スタンプの効果は絶大でした。現在もスタンプをリリースするたびにダウンロード数が伸び続けており、特に若いお客さまとの新しい接点の開拓につながったと思います。
--「うさぎたん」を通じて、通常の資生堂のコミュニケーションでは接することができない、新しいお客さまの開拓に繋がったんですね。
小助川:若い世代とのコミュニケーションルートを持てたことが一番の利点ですが、スタンプ自体はかなり幅広い層から支持されています。赤ちゃん体型のようなおしりのバランスなど、無意識にかわいいと思わせる要素が詰まっているので、万人から愛されるみたいですね。
--これまで様々なポーズやシチュエーションの「うさぎたん」スタンプが配信されているかと思いますが、キャラクターの世界観はどのように決めていったのでしょうか?
小助川:HORSTONさんと資生堂のメンバーでアイデアを出し合って決めています。基本的にはHORSTONさんのイラストから生まれてくるものを優先していますね。他のLINEスタンプのキャラクターをリサーチすると、感情表現が激しかったり、ユーザー同士の会話に使いやすいセリフを多用するものが多いようなのですが、「うさぎたん」は決してしゃべらないんです。そのあたりはHORSTONさんのこだわりもありますが、独自の絶妙な世界観をキープするようにしています。ユーザーの気分を考慮しつつも、あまり生っぽくならないような空気を大事にしています。
--独特のかわいらしさで「うさぎたん」はこれからもヒットを続けそうですね。今後、「うさぎたん」はLINEスタンプ以外の場所でも展開していかれるのでしょうか?
小助川:LINEスタンプを始めてみて、意外なものがヒットを飛ばすことがあるとわかりました。「これ、どうやって使うんだろう?」と思えるようなスタンプを意識的に入れていますが、ユーザーは思ってもみないような使い方をしていたりします。こうしたユーザーに託すコミュニケーションは、現代のメディアの面白いところだと思いますね。当初目指したターゲットとは違うところで意外なつながりが生まれ、いい距離感での関係性が育まれています。いまは「モノ」より「コト」でつながっていく時代だということが実感できました。うさぎたんの展覧会を開くなど、リアルな場でのコミュニケーションも行ってみたいですね。