
--大人ならではの悩みを研究し、2015年に生まれた化粧品ブランド「PRIOR」が主催する体験型イベント『未来の花咲くパーティー』の主旨について教えてください。
角田:『未来の花咲くパーティー』は、50代以上の女性にお化粧の楽しさを再確認していただき、「一緒にキレイになっていきましょう」というメッセージを込めた応援イベントとして、2016年の9月から11月にかけて、全国7会場で開催しました。イベントでは、生け花のショー、トレンドを取り入れたファッションショー、資生堂のヘア&メーキャップアーティストによるメークのコツを解説するショーを行いました。
村澤:そのほか、抽選で選ばれて来場した約2,000人全員に美容部員のアドバイスとともにメークを体験していただきました。メークをしてキレイになっていただいたあとは、桐島ローランドさんを含む3名のプロカメラマンによる個別の写真撮影も行ったんです。当日撮影した写真は、参加者全員にお持ち帰りいただきました。
--村澤さん、角田さんはイベントを通してほぼすべての会場に出向いたそうですが、参加した女性たちの様子を見て、新たに気づいたことなどはありましたか?
村澤:参加者の方に向けて行ったアンケートで「若いときよりいまの自分のほうが好きなところは?」とお訊きしたところ、「いまのほうがゆとりができて好き」と回答された方が多かったことですね。年齢を重ねることを、みなさんポジティブに楽しんでいるのだなと感じました。
角田:経験を積んだことで気持ちの余裕が生まれ、「いまが一番楽しい」と言っている方が多かったのが印象的でした。
村澤:ですので、私たちのあるべき姿は「50代以上の女性を応援する」などといったおこがましいものではなく、すでに輝いているその世代の女性に対して「キレイになるお手伝いをさせてください」といった姿勢が正しいかもしれないな、と思いました。「お化粧によって、楽しさをプラスできますよ」という提案です。
--イベント告知のための新聞広告では、モデルの女性たちのいきいきとした表情が写真に収められています。
角田:全体のビジュアルとしては、「華やかさ」をキーワードの一つに考えました。スタイリストの伊藤佐智子さんには、日常でも着ていそうな明るい色の洋服や、この年代の方々が自然に着こなしているように見える着物のスタイリングをしていただきました。
村澤:じつは広告内でポーズをとっているモデルさんは、一般の方たちを起用しているんです。それが功を奏して、自然な楽しさを醸せたような気がしますね。
角田:カメラマンは、PRIORの広告写真を担当しているアンディ・チャオさん。合成などは一切なく、一発撮りなのもポイントです。
村澤:スタジオのなかでは大音量の音楽をかけて、モデルさんたちは徐々にリラックスして、とても盛り上がっていましたね。
角田:現場ではアンディさんが、女性たち一人ひとりを下の名前で呼んで、ジャンプして撮影するときには大声で「みんな、跳んでー!」って(笑)。当初の撮影時間より2時間くらい延長して粘って、それぞれが一番いい笑顔になる一瞬をとらえてくださいました。
--今回のプロモーションのメインコピーに起用された「第二幕は、とびきり楽しい。」は、どこから発想を得たのでしょうか。
村澤:じつは、当初のメインコピー案は「今日は未来のはじまり。」だったんです。でも、広告の撮影現場を目の当たりにして、その案がおとなしく感じてしまって。撮影後に考え直し、「第二幕は、とびきり楽しい。」に差し替えたんです。
--パーティーの東京会場、東京国際フォーラムのある銀座駅では、そうした躍動感の一端が伝わるような交通広告も展開されていました。
角田:広告で使用する集合写真を撮影した際、アンディさんがメークの待ち時間に「撮ってみよう」と一人ひとりに声をかけて、単独の写真も撮影していたんです。その写真に各女性のキャラクターが反映されているようでとても良かったので、交通広告で使用することにしました。
--写真も素敵ですが、「美しい100歳だって夢じゃない。」「シニア女性って誰のこと?」などのユーモアにあふれたキャッチコピーも目を引きます。
村澤:これらは、最初に出す新聞広告のために考えていたコピー案の一部だったんです。共感してもらえるような言葉を目指して考えました。
角田:交通広告って横目で見ながら通りすぎる方も多いかと思うのですが、広告の前で立ち止まり目を留めてくださる方を多く見かけたのが嬉しかったですね。
--『未来の花咲くパーティー」が全国7会場で終了したあとには、各地域から1名ずつ参加女性を起用した新聞広告も掲載されました。どういった経緯からこの広告を作成されたのでしょうか?
村澤:全国各地に素敵なPRIOR世代が増えているということを知ってほしかったんです。また、若い方々がこの広告を見て「歳をとるのも悪くない」と思ってくれたらなお嬉しいですね。
角田:個人的には、この女性たちと同世代の男性に向けて、「シニアと呼ばれる世代は、あなたたちが思っているような『おばあちゃん』じゃない!」と知らしめたかったという思いがありましたね。いまの女性のリアルを再確認してほしかった。
村澤:今回、一連のコピーを考えていたときに、アメリカの詩人、ウォルト・ホイットマン(1819年~1892年。アメリカ文学において、「自由詩の父」と呼ばれる人物)の「若い女は美しい、しかし、老いた女はもっと美しい。」という言葉に100万回うなずきました。コピーライターとして、交通広告にある「美しい100歳だって夢じゃない。」という思いが強いです。年齢を重ねても女性のみなさんには好きなように装って、メークを楽しんでいただきたいですね。